GenomONE(ゲノムワン)はさまざまな人達の手で製造されています。そんな人達のいろいろ語り。
研究者ならではの発想が読めるかも?!

2008・10・3 更新

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第7号
20世紀HVJ物語」
−細胞融合とノーベル賞−

 

 先日、映画「20世紀少年」を観てきました。遊び仲間で作ったかくれ基地やアポロ11号月面着陸、大阪万博など60〜70年代の懐かしい場面が多く出てきて、映画のストーリーとは別に21世紀への期待と夢を膨らませていた子供の頃の思い出にも浸ることが出来ました。
その当時、科学の分野では朝永博士が日本人として二人目のノーベル物理学賞を受賞し(1965年)、その成果の意味も何も分らないまま、ただ漠然とすごいなぁと科学への憧れを抱いていました。

 ノーベル賞と言えば最近、京都大学・山中伸弥博士の「iPS細胞の樹立」が最有力候補として期待されていますが、50年代にも生物学の分野で日本人によるノーベル賞級の発見があったことをご存知でしょうか。
故岡田善雄博士による「センダイウイルス(HVJ)による細胞融合」の発見です。
 その論文発表(1957年)から約50年を経過した現在も、細胞工学の分野に限らず自然科学全般の発展に大きな波及効果を与え続けています。分析、診断、医療など様々な分野で利用されている「モノクローナル抗体」もその成果の一つです。

 この「モノクローナル抗体」の作製技術がケーラー博士とミルシュタイン博士によって確立されたことは一般によく知られています。その功績に対し1984年にノーベル生理学・医学賞が授与されました。
博士らは、抗体を生産するB細胞と無限増殖する骨髄腫(ミエローマ)細胞との異種間の細胞融合を行った後、HAT法によってハイブリドーマを選抜し、モノクローナル抗体作製に成功しました(1975年)。
 この時の細胞融合には、今ではあまり知られていませんが、不活化されたHVJ(inactivated Sendai virus)が使用されていました1)。その後、ポリエチレングリコール(PEG)法や電気融合法が細胞融合の主役となり、細胞へのダメージが最も少なく、操作も非常に簡便であったにもかかわらず、HVJ法は一般に広く普及しませんでした。
 当時はまだ安全で一定の性能を持つ品質規格の管理された「不活化HVJ」を工業レベルで製造、供給できなかったことが最も大きな原因だったのではないでしょうか。

 ここで、それまでの技術的進歩の流れを表にし、並べてみました。

表・HVJによる細胞融合の発見からモノクローナル抗体作製技術に関するノーベル賞受賞まで

1957 HVJによる細胞融合(岡田ら)
1964 雑種細胞選別法(HAT selection 法) (Littlefield JW ら)
1965 異種間細胞の融合(Harris H ら)
1975 モノクローナル抗体作製 (不活化HVJ使用) (Kohler G & Milstein C)
1975 PEGによる哺乳類体細胞間の細胞融合 (Pontecorvo G)
1980 電気刺激による細胞融合(Zimmermann Uら)
1984 Kohler G & Milstein C ノーベル生理学・医学賞受賞

 これを改めて見てみると当時、「モノクローナル抗体」を作製するのに特別な最新技術は使われていなかったことが分ります。
必要な技術・材料は全て10年前(1965年)までに先人らによってお膳立てされた状況にありました。偉大なノーベル賞受賞者には失礼な言い方ですが、ただ単に細胞の種類を変えて細胞融合を行っただけなのです。
 しかし、それまでの10年間、彼ら以外に誰もB細胞とミエローマとの組み合わせに気が付き、これを実行した科学者はいませんでした。
ここで重要なことは「技術の新しい用途」を発見したことだと思います。
たとえ多額の研究資金や最先端技術はなくても、ごく当たり前の技術でもアイデア一つで画期的な研究成果を上げることはできるのではないかと勇気と希望が湧いてきます。

 発売以来 in vivo, in vitro におけるプラスミドDNA、siRNA、タンパク質の導入ツールとして幅広くご利用いただき、その研究成果は120報を超える論文として発表されるまでになりました。
 今回は新たに「Cre リコンビナーゼ」の細胞内導入について、注目すべき事例が追加されました。その他の酵素や抗体をはじめとする機能性タンパク質の導入事例とともにこちらで紹介しています。

 GenomONE シリーズは全て「不活化HVJ(HVJエンベロープ)」を基本技術としており、品質管理された製品として安心してご利用いただけます。これらの製品が21世紀の画期的な研究成果を生み出すツールとして皆様のお役に立てることを期待しております。

(21世紀に夢を持ち続ける、もう一人の20世紀少年)

参考文献
1)Nature Vol. 256 , 495-497 , 1975. Koller G and Milstein C.

 

 

 

 

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